概要
Adobe Systemsは、製品名「Photoshop」が英語の動詞になったほど実績のある大手企業です。人気の高いフォトレタッチツールPhotoshopは、ページレイアウト、動画編集、Webデザインなど他のツールと共に、世界中で利用されています。世界的プロバイダーとして、基本ツールをサービスとしてオンラインで提供するようになったAdobeは、箱売りソフトウェアから、サブスクリプションベースのクラウドサービスへの移行に伴い、多くの課題に直面しています。
課題
Adobe Systemsの1万人を超える社内開発者は、日常業務を遂行するために同社が開発した多くのAPIを用いてビルドする必要があります。こうした開発者は、さまざまな時間帯に勤務していますが、勤務時間が重なることも多く、社内システムに大きな負担がかかっていました。
さらにAdobeチームでは、既存の製品/サービスについて、社外の開発者も拡張機能、アドオン、統合機能の開発ができるようにしたいと考えており、そのため外部からも一部の社内開発用APIにアクセスできる必要がありました。
AdobeがAPIゲートウェイを選定する際に最も重視した要素は「安定性」です。また、「パフォーマンス」と「レイテンシーの最小化」も同じくらい重要でした。1日当たり数百万件のリクエストがあり、年間では数十億件にも達するため、拡張性が高いことはもちろん、価格も手頃なソリューションが求められていました。
当初Adobeは、商用APIゲートウェイソリューションを利用して、このようなトラフィックを管理およびルーティングしていました。しかし、その後、チームはすぐに、社内の開発者がすべての社内のAPIやアプリケーションでNGINXをすでにゲートウェイとしてデプロイしていることに気づき、わざわざ高価な商用ゲートウェイを使わなくても、APIゲートウェイの必要なタスクはすべてNGINXで処理できると判断しました。
ソリューション
その結果、Adobe I/Oプラットフォーム全体がNGINX APIゲートウェイに移行されることとなりました。この移行により、即座にメリットがもたらされ、コストを削減できたと、Adobeのソリューションアーキテクトであるドラゴス・ダスカリタ・ホート氏は述べています。
「今回のNGINXによる独自のAPIゲートウェイを実装する前は、ゲートウェイに対応している別の商用製品を検討していました。その後、NGINX内にAPI管理のビジョンを構築したらどうかという考えにたどり着き、その翌年の初めには、すでに最初のバージョンのゲートウェイを公開し、社内のチームが使用しはじめていました」とホート氏は語ります。
NGINXは、社内サービスのロードバランサーとしてすでにその効果や機能性が実証されていましたので、今回のAPIゲートウェイへの採用に関してNGINXが選ばれた理由は、その信頼性とパフォーマンスであったとホート氏は述べています。
成果
Adobe内外のAPIユーザーは、すべてNGINX経由でルーティングされるようになりました。Adobe I/Oは、APIを介してAdobe製品と連携する必要があるすべての開発者のための「ワンストップショップ」として機能します。NGINX APIゲートウェイによってレイテンシーのない環境が実現し、1日当たり数百万件のリクエストを処理できるようになりました。
Adobeについて
Adobe Systemsは、年間売上高70億ドル以上を誇る、世界最大級のソフトウェアプロバイダーです。ほぼ普遍的なパブリッシングソフトウェアであるPostscriptで有名になり、その後フォトレタッチツールのPhotoshopは、製品名が動詞化されるほど高い人気を誇っています。現在、世界中で1万8,000人以上の従業員を擁し、アートツールやクリエイティブツールのオンラインバージョンを提供しています。主力事業をWebに移行したAdobeは、アジリティとクラウドベースのデプロイをうまく取り入れることで、ツールをオンラインサービスとして提供し、購入ベースからサブスクリプションベースへと完全にビジネスモデルを転換させています。